旧市街まで散歩しながら、現代アート美術館にやってきた。
「アキも今、夏休みなの?」
隣のアキは目の前の絵に心奪われていて、私の存在すら忘れていそうなほどだ。
静かな館内の雰囲気に合わせて、小声で囁く。
答えは返ってこないかも…と思いつつ。
「夏休み…か。まぁ、そんなところだ。」
ちゃんと聞いててくれたことに少し驚いた。
でも、視線は真っ直ぐ前を向いたまま。
それになんだか曖昧な答えだ。
フリーで働いていると言っていたし、夏休みなんて厳密なものでもないのかもしれない。
きっとアキは絵が本当に好きなのだろう。
美術館内のありとあらゆる絵を、まるで魂を抜かれてしまったかのように見入っていた。
なんだか、そんなアキが一人でどこかに行ってしまいそうで、寂しいとさえ感じてしまったほどに―


