「お前、一人で旅してるのか?」


窓の側に立つ彼は、逆光になってて、その表情が見えない。

けれど、さっきのホワイトタイガーのような獰猛さはないにしても、その立ち姿は凛として気高い。


「多分、過労とストレスだろうって。無理して一人旅なんていきがってるから」

「そんなこと……ないよ」


なんだか馬鹿にされたのが悔しくて、言い返したものの、この有様では、説得力がなさ過ぎる。

また怒られるかな、と少し身構えたけど、窓の所から戻りパイプ椅子に腰掛けた彼は、優しい表情で私の頭に手を添えると「無理すんな」って微笑んだんだ。



それから「もう少し休め」という彼の言葉に、素直に従い、私はもう一度深い眠りへと誘われた。

でも、もうあの夢を見ることは、なかったんだ。