「ねえ、ジュン、この街って……」



二人で、街の中心のダム広場まで、歩いて来た。

私の目線に気付いた彼は、ああって察してくれたようだ。

私たちの目の前には、濃厚なキスを交わす、かなり体格のいいカップルがいる。



「今日は特別やねん」

「特別?」

「そう、ゲイのお祭りの日やから」

「そうなの?!どうりでカップルだらけだと思った」

「まぁ、今日に限らず、この国はいつでもゲイ天国やけどな」



彼はそう言うと、驚く私を見て、満足そうに笑ってた。





彼、ジュンは、本当に笑い上戸だ。

さっきから、何が面白いのかよく笑う。

戸部純也(とべじゅんや)、私と同い年で20歳だけど、一浪したから大学の二年生らしい。

大阪から来た関西人だと言っていた。

「ジュンって呼んでな」と言う彼は、180センチくらいありそうな長身にヒョロっとした細みの体系で、ゆるくパーマのかかった少し長めの髪は、明るい茶色に染められていた。

小さめの顔に、子犬みたいな大きなまん丸の瞳が人懐っこくて、私の警戒心もアッサリと突破してしまったようだ。

常に口角の上がった大きな口は、本当によく喋り、よく笑う。

お喋りな男なんて信用できないし、絶対嫌いなタイプだと思ってたのに、ジュンとの会話は、不思議と嫌じゃなかった。

一緒に歩いてると、必ず自分が道路側だし、さりげなく気遣ってくれてるのもわかった。