私の問いに、リリィは声を潜めて言った。
「一枚投げると、再びローマに来ることができるんだって」
「えっ?ホント」
「えぇ。二枚だと……」
「好きな人と永遠に一緒におることができんねんて」
ジュンがすかさず割り込む。
「じゃあ、三枚だったら?」
「三枚はダメだよ」
アキは優しく諭すように言う。
「三枚は恋人や夫婦が分かれてしまうんやて」
ジュンがわざとらしく暗い表情を作ってそう言ったけど、すぐに「なーんてな」と笑った。
「そんなん、観光協会かなんかが作ったデマやろ?ただの賽銭集めやからなぁ。だってな、四つ目の願いってのも作ってるらしいで」
ジュンはそう言ってケラケラ笑ってた。
リリィは真剣な表情で二枚目のコインを投げようとしているところだ。
ジュンの邪魔が入って、少し怒ってるけど。
私はと言えば、こっそりと財布から二枚のコインを取り出していた。
でも……
「レイもお願いするの?」
不意にアキに声を掛けられ、思わず手元を隠してしまった。


