そしていつも突然目を開けて先生の顔を見て、こう言うの。

「で、愛優菜はあとどんくらい?」

そうすると先生は毎回一つ溜め息をつきながらカルテを開く。
ドキドキしながらいつも先生の言葉を待つ。平然を装ってね?

「正直に言うなら、明日心臓が止まってもおかしくないよ。まず、ここまで生きられてるのが奇跡だからね。」

わ、今日もまた同じ答えか…。良くなってるってことは無いんだなやっぱり。
少しイライラしてヒールで床をコンコンと踏んで気を紛らわす。

「今日は帰さないから、しっかり聞いて欲しい、愛優菜ちゃん自身の身体の状態を。」

少し厳しくなった先生の口調にまた私は怖くなる。不安になる。でも、いつかは聞かなきゃいけないって分かってたから…。

「教えて、先生。」

先生の顔の少し下を見ながら小さな声でそういった。
先生は少し笑って私の頭を撫でてくれた。

「うん。大丈夫、わかりやすく短く大切なことだけを言うから。」

先生の声は優しかった。安心して私は落ち着いた。それを分かったのか先生は私の手を握りながら話を切り出した。

「愛優菜ちゃんの今の状態だとら手や足が動かなくなってもおかしくないんだ。視力が低下していったり声がでにくくなったり、筋力も衰えていく。それに加えて、神経が麻痺して感覚や記憶が薄れていく可能性も高い。いずれは心臓が止まるだろうと考えられる。」

先生の口から言葉が吐き出される事に私の心は不安でいっぱいになって今すぐここから逃げ出したくなる。手も口も震えが止まらない。

「本来なら今すぐにでも入院させたいんだ。だけど、愛優菜ちゃんには夢があるし、愛優菜ちゃんの意志が強いから無理矢理入院はさせないけど…約束してほしいことがあるんだ。」

先生はそう言って私の手を強く握りしめた。