私はケータイを買った次の日、バイトの後北斗と会う約束をした。

私は前に買った淡いピンクのグロスをつけてバイト先を後にした。
ここから北斗がいつも乗り降りする駅まで徒歩10分。

駅に着くと北斗が待ってくれていた。

私は飲み物とお菓子を買っていたからどこも寄らずに初北斗の家。

緊張しながら「お邪魔します」

大きな家…。
自宅兼歯医者さん。

玄関にはかわいい犬の置物?いや本物?
しずかにおすわりしてるから一瞬置物かと思った。

お母さんの声かな「どうぞ」って。

「なつ、ただいま‼」

このわんちゃんはなつさんというらしい。
大人しくてかわいい。

すぐ二階へ上がった。
なつさんも一緒に…。

「適当に座って‼」

「うん」
ドキドキが止まらない。

キレイな部屋だった。
机がなく、テーブル、ソファー、ベッド、テレビ…
クローゼット…壁に棚が備え付けてあり、教科書が隅の方に…オーディオとCDとDVDがキレイに並んでた。

私は床に座った。

買ってきた飲み物とお菓子をテーブルに並べた。

北斗がよく飲んでるカフェオレ。
私はミルクティ。

ケータイをかばんからだして操作の仕方やアプリの取り方を聞いた。

なんとなくわかった。

一時間はスマホとにらめっこしてた。

何か疲れた。
機械は融通きかなくて苦手…。

ふとなつさんを見たら寝てる。
「気持ちよさそうだね」

「なつはさ捨て犬だった…うちの目の前にダンボールに入れてあってさ…目もあいてないうちに捨てられてた」

「そうなの…かわいそう」

「夏でめっちゃ暑い日で…だから名前なつなんだ」

「そうなんだ」

北斗はやっぱり優しいね。

「俺の相棒なんだ」

そっか…いいね。なつさんは北斗とずっと一緒でうらやましいなぁ…。

するとドアをノックする音。
「北斗いい?」

「いいよ」

お母さん…北斗にそっくり。

「こんにちわ」とにっこり。
「あかねちゃん」

何で名前…。

「これ食べて。味の保証はないけど」
とアップルパイをくれた。
シナモンのいい香り。

「北斗が女の子連れてきたの初めてだね。かわいいじゃん‼」

北斗は余計な事言わなくていいからと追い出した。

私が女の子で初めてお部屋御招待されたの?

嬉しい‼っていうか

「私も男の子部屋に入れた事ないけど」

「そうなの?」

「ないない‼私のテリトリーだから」

「俺もダメ?」

「北斗はぜひ‼」

お互いテレ笑いして…恥ずかしい私はテレ隠しにお菓子を口一杯頬張ってみた。

「ハムスターみたい」

また笑われた…。

「あかねって面白い。俺そういうとこ好き」

「あっりがとう」

またかんだ…。
北斗が笑ってくれるならなんでもいいの。

それだけで幸せだから。

「アップルパイ食べる?」

「うん、いただきます」

手をのばすと同じのに手をのばしてた…

「あっ…」

その時目が合って視線をそらせなかった。

顔が近付いてくる…唇にやわらかい感覚。
初めてのキス…。

こんなに愛しくて、幸せな感覚は初めて…。

北斗の香り…私の頬をなでるやわらかい髪…。

体が熱くなる。

まさに夢のようだった…。

真っ暗な世界から優しい光をくれた北斗…。

ありがとう。

私に出会ってくれて、声かけてくれて、好きになってくれて…幸せです。

その光に私は迷わず手をのばす。

見失わないように…。