もう少しで国家試験。

合格発表は卒業後。

学校にいても勉強。家にいても勉強。

友達といても勉強。

狂ったように勉強。

過去問をひたすら暗記。

お経のように繰り返す。

2年間やってきた事がこの試験1回で決まる。

落ちてしまったら来年…。

だけど1回落とすと合格までが更に遠くなる。

入学してすぐ聞かされた。

だから落とせない。

学費だって半端なくお金かかってるし、「落ちちゃった」なんて通用しない。


試験勉強の合間に就職活動。

大翔が住んでる街で見つけたい。

一件だけ…。でもここに決めた。

何としても受かりたい。


面接するための履歴書を書く。

ダメ出し3回目…5回目でやっとOKもらった。

後は、面接で何を聞かれるか…

まさか、彼氏がいるから何て言えない。

先生からはこの街で就職したら?と勧められていた。

でも私は大翔の近くがいい…そのために2年頑張った。


面接の前日。

大翔の家に泊まった。

合鍵を貰ったから…自分で鍵を開けるのは今日で2回目。

緊張するね……ガチャッ……

大翔が居ない部屋。

私達いつぶりに会うのかな…3か月ぶりくらい?

緊張するね…床に座って勉強を始めた。


出来る内にしないと。バスの中でノート見てたら車酔いしちゃったし…。

でももうほとんど頭に入ってる。

見てなきゃ不安なだけ。


そんな時大翔が帰ってきた。

「おかえり」と私。

「ただいま」と大翔。

くすぐったい。二人でテレ笑い。

大翔は部屋着を用意してくれてた。

寒いのにショートパンツの部屋着。

上はパーカーだけど…。

でもこのブランド高いよね?

大翔の大好きなブランド。

レディースもあって、お揃いでTシャツ買ったり、キャップ買ったり。

「俺の趣味」って渡された。

こういうの私ドキドキしてしまう。

大翔は私の事全部分かってるみたいにドキドキさせる。


今日は外でご飯を食べた。

デートだね…幸せだよ…。



明日の面接、緊張するけどシタバタしても仕方ない。

だから今はこの時間を楽しみたい‼


「明日は力抜いて…頑張れ‼」

「うん‼」

大翔はよく片方の口角を上げて笑う。

その顔好き…。

左耳のピアスを触るクセも好き。

テレてるときはピアスを触る。

大翔のクセ。

私がジーっと見てるとよくする。


「何?」と大翔。

「ただ見てるだけ」と私。

このやり取り多い。


私にとってはイケメン。


ずっと見ていたい…。

「そんなに見るなよ…」と大翔。

「見ていたいの‼」と私。

「そんなに俺の事好きなの?」

「好きで、好きで、仕方ない…」

フッて片方の口角を上げて笑う。

下向きながら…。

「大翔は?」

「後でね…」

人前で言わない。

「あっそ…」

今聞きたい。でもいい…。後で必ず聞くから。

コンビニに寄って飲み物とお菓子を買った。

冬はチョコレートの種類が豊富。

三種類も買ってしまった…後ろから「太るよ」っていじわるな顔で笑う。

私は「いいの‼一緒に太ろ‼」

「俺は無理‼」だって。

車の中も会話が尽きない。

久しぶりだもん尽きないよね。

帰ってお風呂に入った。

先にいいよって言われたから私から…。

あったまる…気持ちいい…私のお風呂は長い‼

でも自分の家じゃないし、明日大翔も仕事だし早めに上がった。

テレビを見てる大翔に「お風呂空いたよ」って…。

「いいじゃん…それ」

大翔がくれた部屋着。

パーカーは寝るまで着てよ。

「似合う?」

「まぁまぁかな〰」

こんなやり取りが楽しい。

大翔は私で遊ぶ。

いつもこの時間何してたっけ?って思いながらさっき買ったチョコレート2箱目。

テレビ見ながらはかどる。

最後の箱に手をのばした時大翔がお風呂から出てきた。

「よく食べるね」

「おいしいよ‼」

最後に買ったチョコレートは大翔が好きなチョコレート。

「食べる…」

やっぱり上は着ないの?

「寒そう…風邪引いちゃうよ?」

「後で着るよ…」

そりゃそうだよね。

朝までそれじゃ風邪引くよね。

テレビ見て笑って…バカみたいな話しして、「そろそろ寝る?」

と大翔。

「明日の事考えて寝よっか…」

私はパーカーを脱いで布団に入った。


大翔と向かい合って寝る。

ドキドキするね…真っ暗であんまり見えないのに。

「あかね…好きだよ」

「私も大翔が好きだよ…」

顔が見えないのに緊張する…。

大翔の顔が近い…触れる唇…あったかい手でほっぺたを包んでくれる…。

どんどん激しくなるキスは息も出来ないほどだった。

体を重ねる…大翔はいつも優しく抱いてくれる。

心地いい…体が熱くなっていく…大翔と指を絡ませて二人の世界へ…。

私達はこの3ヶ月間を埋めるようにお互いを求めあった。

こんなに幸せを感じられるのは大翔だから。

大翔は私を救ってくれた…。

いつも喜ばせようとしてくれる…。

こんな私を好きになってくれてありがとう。

大切にしてくれてありがとう。

私はヤキモチやくし、わがままだし、すぐ泣くし、面倒だけど付き合ってね‼

そう…思いながら大翔の腕の中で眠りについた。


「あかね〰起きて…」

「んー…おはよう…」

まだこのままがいい…離れたくない。

またわがままになる。

「あかねみたいにわがままなヤツ、俺以外付き合いきれないね」って…。

キスしてくれた。

「大翔以外無理‼」ってお返しのキスをした。

いつの間にこんなに好きになったんだろう…。

こんなにも愛しく想える人に出会えると思っていなかったから嬉しくて、夢でも見てるみたい。


夢の時間の次は現実の面接。

大翔は先に家を出た。

笑いながらピースして仕事に行った。


私は時間まで部屋を片付けて、面接に行く準備をした。

荷物を置いて部屋を出る。

今日も泊まるから…大翔の帰りを待てるから…頑張る。

大翔の家から面接を受けに行く職場は歩いて30分くらい
の場所にある。

受付の人に「面接に来ました…佐藤です」と伝えると、優しそうな顔の先生が来た。

「じゃぁ…こっちで面接しますか」って…。

なぜここを受けようと思ったかとか、歯科衛生士を目指した理由とか…色々聞かれた。

緊張して何を答えたかあんまり覚えていない…。

そんなものだよね?

結果は一週間後…今聞きたい…。

「ありがとうございました。失礼します」

と言って帰ってきた。

手応え?さぁ〰?ヤバくない?それ…。


大翔の家着いてスーツから私服へ着替えた。

近くのスーパーに買い出しに行った。

今日はグラタン。簡単だから…。

家に帰ると暇だなぁって思って掃除を始めた。

大翔のピアスケースの横にプレゼントらしき小さな箱…。

ショップの袋に入っていた。

何これ?昨日私にくれなかったって事は別の人にあげるのかな…それとももらった物?

聞く勇気がない私は気になりながらもふれなかった。

知らなくていい事もあるし…。

でもそんな時、北斗との事が頭をよぎる…。

大翔はいつもと変わらない。


「面接どうだった?」とか「受かってるといいな」とか

普通…。

私も普通にしてたつもり。

頑張った。

気になるけど聞いてどうにかなるのも嫌だから…。

結局一睡も出来なかった…。

大翔は隣で気持ち良さそうに寝てる。

泣きそう…トイレに行って泣いた…。

気づかれないように。

一ガチャ一

「何してんの?っていうか何で泣いてるの?」

バレてしまった…鍵をかけ忘れた…バカだ…私。

適当に言い訳した。

だけど、通用しない。

だから聞いてみた…「あれ…何?」って。

ショップの袋を指さして。

大翔は「あっ…あれね…」って困った顔してる。

やっぱり私に言えないものなんだ…。

「無理に答えなくていいから…」

「怪しいものじゃないよ…あかねの就職祝…しまうの忘れてた…」

「そうなの?」
私って単純…。

「疑われるの嫌だから今あげる」
ってくれたものは…ネックレス…オープンハートの…。

歯医者で働いたら指輪出来ないからって…。

大翔は何にも考えてなさそうに見えるのにいつも私の事考えてくれる。

「でも就職落ちたら没収ね」って大翔は笑う。

「落ちたら…買い取ります」って私。


大翔はズルイよ…。

好きな気持ちが溢れちゃって、押さえきれないよ…。

私はきっと大翔に何をされても嫌いになれない。

「別れよう」なんて言われたら…足首つかんでもしがみついちゃいそう…。

大翔と一緒だったら何でも出来るよ‼

どんな事も頑張るよ‼

大翔にとって私の存在が少しでも癒しになってくれたらいい…。

だからマイナスな事は考えない。

大翔を信じてるから。