私達は初めて大きなケンカをした。

小さいケンカは時々あった。

このケンカの理由はほんのささいな事。

大翔からの電話…

大翔 「お疲れ‼」

私 「お疲れ‼実習ツライ」

大翔 「頑張れ…後少し」

私 「まだまだだよ…大翔に会いたい」

大翔 「俺も…」

私 「今日は家でゆっくり?」

大翔 「いや…誘われててご飯行く」

私 「また行くの?私も大翔とゆっくり話したい」

大翔 「仕方ないじゃん…こっちにも付き合いあるし」

私 「わかんない…私だけ大翔が好きで、会いたいみたいだね…」

大翔 「そんな事ない…同じ気持ちだよ」

私 「絶対違う‼私だけじゃん…」

大翔 「………子供じゃないんだから」

私 「何それ?私のわがまま?」

大翔 「どう言えば良かったの?」

私 「それ聞くこと?」

大翔 「じゃぁ…知らない。これ以上どうしろって事?」

私 「もう…いい‼大翔なんて嫌い‼」

大翔 「あっそ…じゃぁ切るよ」

一プツッ…ツー…ツー…一

そうじゃないよ…嫌いなんか嘘。

何でもっと連絡くれないの?

会いにきてくれないの?

わがままなのはわかってるよ…だけど…不安なんだよ。

離れてるから…残業だって夜中の12時まであったり…信じてるよ…信じたいよ。

私がおかしいの?

電話できても30分。

短いよ…。もっと話したいよ。


私ね、学校終わって遊びに全然行かないのは大翔からの連絡待ってるの…。

重たい?ウザイ?

だって…私が遊んでたら大翔「楽しんでおいで」って切るよね?

帰って連絡しても寝てたりして話せないじゃん…。


大翔だって遊んでる訳じゃない。

仕事頑張ってるの分かる。

だけど…ゆうりくんやりこやみんなで遊ぶ時間はあっても私と話す時間はないの?


それってわがまま?

よく聞くの…みんなで集まって遊んでる事。

うらやましいのとヤキモチの両方。

上手く言えない…。


私ね…タイミングわかんない。

ケンカして一週間。

連絡なし。

このまま別れちゃうのかな…。


そんな不安ばっかりが頭の中でグルグル回る。

連絡する勇気もない。


だけど…このままとか絶対嫌‼

深呼吸して連絡した。

ケンカして一週間後。

大翔 「はい」

いつもと違う…冷たい声…。

もしかしてフラれちゃうのかな…。

私 「この前は…ごめんね」

もう無理って返事きたらどうしよう。

大翔 「………仕方ない、許す‼」

一週間、不安だったのにあっさりなのは何で?

大翔 「ケンカしてもいつも俺が折れてたからお返し」

私 「………………」
何も言えないよ。涙が止まらない。

その後、大翔はそこまで私が不安に思ってたとは知らず、
ただ怒っているものだと思っていたらしい。

子供みたいに泣いてる私に大翔は困ってた。

「ごめん」って。

だけど付き合いもあるんだよって。

頭ではわかってるよ。

行動が伴わないのはなぜなの?

それは…好きだから。

理屈じゃない…好きだから。

私は強くなれないよ。


泣いてる暇なんてないのに…。

大翔の事ばっかり考えて勉強が手につかなくってた。

これじゃいけないから、得意の髪を切る。

気持ちをきりかえたい。

私は遊びに来たわけじゃない。

来週からホームヘルパーの資格を取りに行くための実習が始まる。

歯科衛生士はヘルパー2級の資格が必要だから。


だから週末、バッサリ髪を切った。

ショートヘアに…。


後、一年ない。

試験を落とすわけにはいかない。

今しかないんだ‼


そういい聞かせた。


髪を切って家に帰る途中…手を振る誰か。

「あかね‼」

………大翔だ。

何でいるの?

「今日、仕事休みだったから来た。アポなしで。夜には帰らなきゃいけないけど…」って。

少し見ない内に大翔は大人っぽくなってた。

わざわざ3時間かけて来てくれたの…嬉しい。

「ありがとう…大翔…会いたかった」

頭をなでてくれる大きな手も、その笑顔も声も私が一人占めできる時間。


この日は色んな話をした。

学校の話、卒業後の話。

大翔の仕事の話…来月には同窓会があるんだって。

あの子来るのかな?

不安って次から次にでてきて…切りがないね…。

何でも言えばいい訳じゃないし我慢した。


少しは大人になったかな?

余裕は全くありせん。笑っちゃうほど。


髪を切った私に大翔は「幼くなったな」だって。

せめて「かわいくなったな」って言ってよ…。