俺の2度目のプレーオフ最終日がやってきた
前日の雪も心配されたが問題なさそうだ
杏さんは9時頃の新幹線に乗ると言っていたから、昼くらいには花園に着くだろうと思っていたが朝つけていたテレビで新幹線が大幅に遅れていると情報があった
不安の中、試合前のウォーミングアップと最終的な動きの確認のあとミーティングに入る
試合前の選手紹介が始まり、杏さんが座るはずの席を見るもまだ姿はない
彼女は無事だろうか…
事故や事件に巻き込まれてないだろうか…
円陣を組むとお決まりのキャプテンの一言が始まる
「さぁていよいよ最後の試合だが、大也!」
突然名前を呼ばれハッとする
心配するあまり顔に出ていたのだ
「今案じても状況が変わる訳ではない。信じろ
」
キャプテンの言葉に自分のやるべき事を思い出す
「俺、この試合勝ったら杏さんにプロポーズしようと思ってます」
今日を逃すとプレーオフ最終日を杏さんに観てもらうことができるのはいつになるかわからない
今日しかない
「だったらやることはひとつ。この試合に勝つことだ。行くぞ野郎共!」
キャプテンの掛け声にテンションをMAXに上げる男達
この試合で俺は今までにないマークのキツさに苦しんでいた
思うようにトライが決まらない
そんな焦りもあり、普段しないミスもする
前半も残り僅かというところで俺に回ってきたボール
「11番走れーー!!」
ボールをキャッチした瞬間に響いた彼女の声
5年半前と同じあの言葉
さっきまで苦しんでいたのが嘘のようにスピードが上がる
向かってくる相手の動きも見える
インゴールのサイドから中心に走り込みトライを決める
「っしゃぁああ」
あの時と同じようにガッツポーズを決める
あの時と違うのは彼女がトライを最後まで見届けてくれたこと