「朗報だ。杏が離婚したぞ」
2ヵ月程前に離婚をしたらしい
彼女には申し訳ないけれど、俺が待ちに待った言葉
「きたぁー!!」
思わず寮の中だと言うのに大声で叫んでしまった
「ただ」
そんな俺を鎮めるように逆接の言葉を口にする拓さん
「荒れに荒れてる」
「荒れてる…?」
「完全に男性不信状態で、寄ってくる男誰彼構わず状態になってやがる」
「そんな…」
想う女性が知らない男と誰彼構わずと言うのもショックだが、それ以上に今アタックしたとしてもその他の男達と同じように一晩の体の関係で終わってしまうことが俺でも理解できる
「まぁ、元が真面目なやつだからいつまでも続かないとは思うが…」
俺もそう信じたい
「ここまで待ったんだから、どんだけでも待ちますよ」
自嘲気味に笑う
彼女の心の中の整理がつくまで何年でも待とう
ちゃんと『俺』を見てもらうために
一瞬の歓喜の後、また『待つ』日々が続く
その間も男磨きは欠かさない
いつか来る本当の『チャンス』のために
年が明け最後の大会も終え引退すると、高梨グループの練習に参加させて貰った
大学ラグビーとの技術の差は感じるものの、大学4年間で誰よりも基礎トレーニングとウェイトトレーニングを積んだと胸を張って言える俺は負けないと思えた
ここでも先輩達とたくさん話をして技術を更に磨いていった
ここでも与えられた背番号は『11』
ウィングの片翼を担う大事な番号
日本代表の視察団が見に来るという試合にも出させて貰い、後日声を掛けてもらえることができた。
4月になり入社式も終わり、他の新入社員と同様に1ヶ月の新人研修を受ける。
と言っても午後は練習があるので研修を受けるのは午前中だけ