運命なんてありえない(完結)



卒業式で拓さんと話ができたことで、やるべき事が明確になってきた俺は翌日から部活の後にバイトがない日は近くのファミレスへ通うようになった

いきなり世界を広げろと言われても大学生の世界には限りがある。金銭的にも…


ファミレスなら安く飯も食べられるし、24時間営業だから時間も気にしなくていい。


何より色んな人間が集まる

サラリーマンにOL、家族連れ、ご年配の方etc


何もせずに長時間居座るとただの不審人物なので、毎回本を1冊持っていって読んでいるフリをしていた


たまに本に夢中になって人間観察を忘れることもあった


女性関係については、最初はあまり乗り気ではなかったが、彼女を見ることもできない寂しさと拓さんの言葉もあり、今まではお断りしていた言いよってくる女の子達に『他に好きな人がいてもいいなら』と断りを入れ割り切って関係を持った





そんな日々が2年程続き大学最後の1年が始まった頃


同級生が就職活動に勤しむ中、俺はまだ進路を考えあぐねていた


普通に就職するか…

教師になるか…

トップリーグのチームの門を叩くか…



そんな時、大学の教務課から緊急の構内放送で呼び出しがかかり、普段ほとんど立ち寄らない建物へと足を踏み入れる



教務課のカウンターに座る事務員に名前を告げると2階の応接室へ案内された


そこは初めて入る部屋だった



中に入ると見知らぬ男性が2人とラグビー部の顧問が座っていた



顧問に隣に座るよう促され、突っ立ったままだった俺は指示された場所に腰を下ろした



向かい側に座る2人から順番に名刺を渡される


秘書の吉野さんに


代表取締役社長の高梨さん……社長!?



向かいに座る2人からクスクスと笑いが漏れる


「おい大也、表情に出過ぎ」


即座に顧問から指摘が入る

「すみません」


「いいんだよ、近いからってアポなしで伺った我々も悪いからね」

社長が穏やかに言う