運命なんてありえない(完結)


「そんなションボリすんなって」


男がクスクスと笑いながらポケットからスマホを取り出す


「いいもんやるから、電話番号言えよ」


言われるがまま電話番号を言うとポケットの中のスマホが震えたのでポケットから取り出すと、男からの着信のようだった


「それ俺の番号。お前名前は?」


「酒井大也」


「俺は兼元拓(かねもとたく)、拓でいいよ」


先ほどの番号を電話帳に登録する


「拓さん、俺どうしたらいい男になれますか?」


2ヶ月考えても出なかった『答え』

拓さんなら知ってるのだろうか…


「知らねぇよ。」


即答で返ってきた期待を裏切る答え


「いい男の基準なんて人それぞれだろ。ただ言えることはゲームも現実もレベルアップには経験値が必要なんだよ。
大学なんてちっちゃい世界だけにいないでもっと世界広げろよ。
女の経験も増やしたらいい。どうせすぐにチャンスは来ねえし、チャンスが来た時にポンコツじゃ話にならねぇからな」


俺の知ってる世界はせいぜい大学内とバイト先だけだと気付く


手の中のスマホが震えメールアプリのメッセージ着信を知らせる



開くと拓さんからで写真が送られてきていた


「っ拓さん!!」

送られてきていた写真を見て、興奮して拓さんを見る


「俺からの餞別。杏が離婚したら教えてやるから、男磨きもせいぜい頑張れよ」


先ほどと同じ不敵な笑みを浮かべ出口に向かって行った


俺の手の中のスマホの画面には、今日の卒業式のために髪をキレイに結い、薄いクリーム色の着物に濃い紫の袴を着て卒業証書を手に照れくさそうに笑う彼女の写真


忘れないうちに保存…と