運命なんてありえない(完結)


新しいタバコに火をつけながら男が言う。



「嫌いって…日下さんの友人なのに?」



「友人だからだろ。杏にそいつとの始まりを聞いた時に、そいつ繰り返すなって思ったんだよ」


「繰り返す?」


「杏から告白された時、他にに彼女がいたのに杏に乗り換えたんだとよ。そんな男、いずれ同じこと繰り返すに決まってる。本当男運ないよなあいつ」


苦笑しながら煙を吐く


「お前は俺が睨んでも懲りずに杏だけ追いかけてたからな、モブキャラにするのもったいねぇだろ」


そう言ってタバコを水の入った灰皿に捨て歩き始める


「ま、せいぜい杏が別れるまで男を磨いとけよ。」



後ろ手を振って去っていったあの男は敵ではないようだった

にしても『男を磨く』ってどうやるんだ…





2ヶ月くらい悩んでる間に卒業式の日がきてしまった

総合大学で学生数が多すぎるうちの大学では近くの大きなホールを借りて卒業式が行われる


各部活やサークルの在校生達が先輩を見送るためにホールの出口の広場に溢れる


俺達ラグビー部も出口から10メートルくらい離れた場所で卒業生を待つ









「よぉ」


7人の部の先輩を見送り、夜の運動部合同の祝賀会まで解散となったので、帰る前にトイレに行った帰りにトイレの横の喫煙所からあの男に声をかけられる



「ご卒業おめでとうございます」


敵ではないと前回わかったので、自ら近付きお祝いを述べる



「おう」


不敵に笑う姿は男の俺から見てもかっこいいと思う

まだ多くの学生がスーツに着られている中、この人だけはスーツも着こなしている



「杏ならもう帰ったぞ」


俺の淡い期待が打ち砕かれる



「まだ早いっつったろ?石の上にも三年、果報は寝て待てだ」