運命なんてありえない(完結)


そうやって近付けないまま後期のテスト期間へ突入した


4年の後期なんてテストはほとんどないからもう会える確率も絶望的にない



結局一言も話せないまま卒業してしまいそうだなという思いがよぎりがっくりと肩を落とす


それでも体は空き時間の習慣となったトレーニングルームへ足を向け歩き出していた


この1年で筋肉もだいぶ着いて、走りながらの当たり負けも少なくなった…まだ負ける時があるからもっと強化しなきゃだけど


持久力はマークがキツくても一試合走り切れる程にはなった


筋力が着いた分、スピードも上がった




全部彼女のおかげなのに、お礼の言葉どころか話しかけることも出来ないなんて



「おい」



トレーニングルームへの道の途中にある喫煙所からあの男に呼び止められた


手招きされ近くへ寄る


「あの…何か」

「杏に近付くならもう少し大人になってからにしろ。お前じゃまだ早い。」


「え?どういう意味ですか?」


突然の言葉に意味が理解できない


「そのまんまの意味だろ。人生経験の浅いガキなんて杏は相手にしねぇよ」



人生経験の浅いガキ

俺はガキ過ぎて俺の何がどう浅いのかもすぐに思い浮かばない程に浅いのだ


「どうしてそんなこと俺に…」


「お前だけが本気で杏を見てたから…かな。あいつ年上好きだし、ラブラブな彼氏と卒業式の後に籍入れるらしいから、今アタックしてもただのモブキャラで終わるぞ」


籍入れる…結婚てこと!?

ショックで固まる

いや確認しなきゃいけないことがあるだろ


「彼氏ってあなたじゃないんですか?」


「はぁ?ないない。100%ない。杏は友人。それ以上も以下もない」


じゃあ、いつも彼女を見たら睨んできてたのは本当に俺がモブキャラになるのを阻止していたということ?


「けど、俺は今の杏の彼氏嫌いなんだよね。」