試合はFBの先輩がキックを決め、逆転勝利で終わった
トライを決めた後にあの声の主を探したけれど、逃げたようで姿はなかった
構内でもいつもカメラを持って歩いて時間があれば何かしら撮影してる彼女
ラグビー場にもよく来ている…でっかい望遠レンズを持ってるから本人はこっそり撮ってるつもりかもだけど、かなり目立つ
かなりの美人でスタイルもいい
けど、どの先輩に聞いても名前は知らないと言うのでスポーツ科学部ではないのだと思った
次の日から俺は朝の日課のジョギングを30分長くし、嫌いだったウェイトトレーニングも本気で取り組んだ。チームメイトとも沢山ラグビーの話をして、どうしたら捕まらずに走り抜けられるかを徹底的に研究し分析した
構内であの彼女を見つけた時は話しかけてみようとしても、いつも決まった男の人と一緒で話しかけられない
「あぁーもう!」
後期の授業が始まっても話しかけられずにいた俺はある日の昼食時に学食で頭を抱えていた
「どうしたの?大也」
「いきなり大声出さないでよ。びっくりするじゃないのよ」
一緒に昼食をとっていた経済学部の橘幸太郎と河本さつきが全く別の反応を見せる
俺ら3人は高校から同じでよくつるんでいた
入学式で3人バッタリ会った時は、「また?」と声を揃えて笑ったのを覚えている
「構内でいつもカメラ持ってる美人さん知らない?」
ダメ元で聞いてみる
「日下杏さん?美人だよね」
なに…こんなに近くに名前知ってる人がいただと!?
「橘、知ってんの?」
「あぁ、パソコンの講義でたまに助手で来てるよ」
助手で講義にくるってことは4年なのか…やばいあと半年もない
それから構内では常に彼女を探すようになった…けどやっぱり傍にはあの男がいて話しかけられない。
彼女は全く俺に気付かないけど、男の方は俺の存在に気付いていて、目が合うと睨みを効かせてくる。顔が整っているだけに効果があり過ぎる。

