「きゃあー」
黄色い奇声を発する佳香からカメラを取り返す
「よしかぁー!帰ったらロッド500本の刑じゃー」
「ひぃー誰にも言わないのでそれだけはご勘弁をー」
私達写真館ではカメラやアシスタントや写真選びだけでなくヘアセットやメイク、着付けも出来て1人前となれる。佳香は基本的に器用なのに髪にカールを付けるロッドを巻くことが唯一苦手としている
佳香に仕返しもして心落ち着いたので、気を取り直して練習に入ってもらうことにする
キャプテンと練習の流れを確認し、ウォーミングアップはボールを使わないものからやるので近くで撮影も可能となり、ボールを使ってるところは実践形式の方がいいとのことで前後半15分ずつの紅白戦をしてもらえることになった
ここからは1人でこの人数を撮るのは厳しいので佳香にもカメラを持たす
ランニングに始まり、体操、ストレッチ、フットワーク、タックル、スクラムなどのボールが飛び交わないウォーミングアップが先に行われた
この後パスやキック、ジャンプなどのボールを使ったウォーミングアップと基礎練習を行い紅白戦まで1時間ほど時間があるということなのでその間に建物の中を撮ることにする
と言っても建物の中の撮る場所は1階と2階だけなので30分もあれば終わる
視察室で私のクッ〇リーを受け取り…内心もっと早くグランドに持ってきてくれても良かったのにとも思ったが、吉野さんの腹黒さはこの視察室にいる4人の中でもダントツだろうと予想されるので大人しく礼を言うだけにする
視察室で少し話し、グランドに戻るとちょうどウォーミングアップが終わろうとしていた
紅白戦の準備に入るとキャプテンが寄ってきて、チームをレギュラー陣とその他(コーチ陣、OB含む)に分けるのでボール付近にいるレギュラー陣を追えばいいと教えてくれた。
あとやっぱりグランドは危ないので、観客席から撮ってほしいと…それは覚悟してたし、観客席でもぐるっと長方形のコートの3辺分あるので充分に撮れる
キャプテンと話を終え荷物を手に観客席へ上がろうとすると
「杏さん、杏さん」
と佳香に呼び止められる
「何?」
振り返ると佳香が円陣を組もうとしてるレギュラーチームを指差した
「円陣の下からのやつ欲しくありません?」
「……ほしい」
そう言って荷物を佳香に預け、肩に掛けてあったカメラだけ握り締めて、グランド内へ走る
「円陣ちょっと待ったー」
なんとか円陣の解散を阻止し、お邪魔しまーすと声を掛けながら円陣の下に割り込み仰向けに寝転ぶ
「せーふ!ご協力ありがとうございます」
そう言いながらキョトンとした表情から笑顔になっていく選手の顔をカメラに収めていく
「今日の意気込みをキャプテンからおひとりずつ聞かせてもらえますかー?」
1人ずつにピントを合わせて意気込みと共にシャッターを切っていく
試合前の表情はどの選手もやっぱりカッコイイ

