「黒澤くんっ!」
その声が聞こえてきてバッと顔を上げる。
いつの間にか、佐倉は俺の目の前にいた。
俺の顔を見るなり、嬉しそうに微笑む彼女に黒い感情が溢れ出す。
なんで俺の前に現れんの?
高瀬と付き合ってるんだろ?
声にならない言葉が頭を埋め尽くす。
「…」
俺は、彼女から視線を外して何事も無かったかのように歩き出した。
そのとき、彼女がどんな顔をしていたかなんて分からない。
「…黒澤くん?」
困惑したようなあいつの声。
そんな声が聞こえてきても、俺の足は止まることはない。
「黒澤くん、待って!」
バッと俺の前に立つ佐倉。
その顔は、今にも泣きそうで切なそうで…

