アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている



俊輔さんによしよし。と頭を撫でられて


何故私がなだめられているんだと思った。


私って泣き上戸だっけな。止まらない


でもやっぱりリーダーに向いてる。
こういうケアが絶妙だ。



「……俊輔さ…」


「前から思ってたけど、その俊輔さんって言うのやめて。しーちゃんって呼んでくれるかしら……あと社長なんだからタメ口もいらないわ。ドンと構えてなさい」



「あ、は、はい」



綺麗な指に涙がすくい取られていき、ニコッと笑ってくれた笑顔に胸が弾んだ。



「あんたには、負けたわ。ま、私がいないとダメみたいだし、リーダーもやってあげる」



「……ほ、ほんと?」


「ええ。だって情けないとか言うけど、私のプライドを守ってくれたから。ちゃーんとね」



「し、しーちゃんんんん」


「もう、汚いっ!鼻水出てるわよ。ちゃんとかんで」



ポケットからハンカチが取り出され、子供にするみたいに鼻を拭いてくれた。



……お母さんがちゃんと母親をしてくれていたらこんな感じなんじゃないか。この人男だけど。




「……なんだかすっきりしたわ。自分の為にもアイドルにならなきゃね。」


「……私絶対全員立派にしてみせる……馬鹿男に後悔させてやるんだからっ!!」



「……期待してるわよ。」


ポンポンと頭を撫でられたのか心地よくて、ギューと自ら抱きついてしまう。酔ってる……酔ってるから、誰かのぬくもりを求めるんだろうか。



お母さんも香水つけていたっけ。
抱きしめてもらったことあったかな?



わかんないけど、いまはこの香りと彼の腕が母性に満ち溢れている気がして心地がいい。




「……なるほど。中々の小悪魔ね。」



しーちゃんがそう呟いたことを最後に私は目を閉じて意識をゆっくり失っていった。




やっと、リーダーが決まって、前に進んだなって少し嬉しかったということは社長らしくなったってことなのかな。