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「おかしいと思ってはいたのよ。彼、どうみたって女好きそうなのに、私に優しくしてくるんだもん。」
「……はい」
「オネェだって言って引かれたらそれでいいわってカミングアウトしたら、受け入れてくれるし、俺はしーちゃんなら平気かも。なんて…話がうまくいきすぎてるわね。」
もうすでに、空いた缶が五本
私はチビチビ飲んでいたのに、俊輔さんが進めるもんだからペースが速い。だけど必死に彼の愚痴に耳を傾けた。
それにしても、話を聞けば聞くほど相手の男がクズすぎて笑えない。
「昔からそうなのよ……男運が悪いの。恋したら何も見えなくなって、騙されちゃう」
「…………」
「結局どんなに努力したって、響かない男には響かないのね。バカみたいね…私」
「……バカなのはあの男です。」
愚痴を聞いてだいぶ経ったけど、どうにも許せない。
女心を利用してお金を取ろうとするやり方も!!
「……俊輔さんは性別は男であれいい女です。私より女子力高いし、それに息を呑むほど綺麗な仕草するし、私が男だったらそこらの女より全然いけますっ!!」
私もお酒が入ったからか、少しわけのわからないことを言ってるなと思った。
ああ…なんだろう。
わかっているのに、怒りがつもりに積もった挙句
俊輔さんがまた涙ぐんだから私も止まらなくなってきたよ
「……あんたに褒められても嬉しくないわよ…。いきなり何なの。」
「…だって……私、悔しいですっ!! 乙女の心を踏みにじる男が許せませんっ!!」
あんなクソ男がこの世で生きてること自体おかしいっ!
「俊輔さんは、真面目だし、責任感強いし、美意識高いし、面倒見もいいし、男であろうと女であろうと申し分ない。」
「……な」
「それなのに、気持ち悪いって!あの男の方が気持ち悪いっ!!俊輔さんのこと何にも知らないくせにっ!!!男だからなんだっ!! 女だからなんだっ!! 恋をする気持ちをバカにする奴はろくな生き方ができないぞっ!!」
「あんた、酔ってる?」
「馬鹿だ…あの男は……。みんなを見守ってる俊輔さんがどれだけ母性に溢れてるか知らないんだ……俊輔さんがいなければきっとあいつらもっとバラバラだもん。私は知ってるっ!!私には冷たいけど、私が連れてきたレッスンの先生にすごく丁寧に対応してくれるし、アイドルになるための姿勢が他の誰よりも立派で、人前にでるからって美容に手を抜かないのも私知ってるっ!! 」
「……」
「それで、踊ってる姿は誰よりも美しいの。私知ってます……」
あまり個人的に1人を褒めてしまえば、他の奴等のやる気がなくなるかなっていままではっきり言わなかったけれど、俊輔さんをリーダーにしたい理由は明確。
誰よりも真面目で、誰よりもメンバーに優しくて、誰よりも努力家。
「……どうして、あんたが泣いてるのよ……」
呆れたように笑った彼が私の目の下を優しくなぞったことで泣いてることに気がついた。
「……情けなくて……」
「情けないって?」
「俊輔さんがそんなに必死に恋してたこと知らなかったから、ややこしいだなんて腹が立ったこと。自分の気持ち押し付けて、ちゃんと話を聞いてあげられなかったこと。できたら早くみんなに仕事とってきてあげたいけど、基礎が大切だってうまく伝えられない。私、社長なんて向いてないし、できない………だって俊輔さんの大切な気持ちを受け入れてあげられなかった。今日だって苦し紛れの嘘でうまく助けてあげられなかったし、ごめんなさいいい」
わぁああと涙が流れてわけのわからないことを続けて話したのは、やっぱり酔っていたからだと思う。
「俊輔さん…っリーダーやってよぉぉっ……辞めるなんて言わないでっ……私あの馬鹿男見返せるくらい、立派なアイドルにしてあげます。なんならイケメンの俳優とかと知り合えるようにしますから………一緒にやって下さいっ。私、1人じゃあんな奴らの面倒見きれないっっ。」
グスグスと泣きながら自分でもすでに何を話してるのかわからなくなってきた。
だけど一瞬いい香りがして暖かい温もりに包まれてることは、頭が理解する。
「……泣きたいのは私なのよ。全くダメ社長ね。」

