アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている



俊輔さんはオネェだけどスタイルがいい。
要は足がながいのだ。
もう外に出てしまっているし、なんなら結構店から離れた。さっきから呼んでいるのに止まってくれないせいでもあるけれど。



「俊輔さんっ!待ってってば!!」


人気の無いところに来て、やっと彼の足がピタッと止まる。



「…何よ。小娘」



先程まで、本当にオネェなのか?と疑っていたけれど、やっぱり本物。


っていまはそれどころじゃないか。



「……出過ぎた真似をしてごめんなさい……」



まずは謝罪した。
内緒で合コン場所に向かい、つけていたのはまぎれもない事実だったし、謝るのが筋だと思ったから。



少し下げた頭を上げて、彼の顔を見た途端ギョッとする。




「……」


「えっ、あ、な、泣いてますかっ?」



「そうよっ!! 悪い!!?」




嘘でしょ……これは想定外だ。



「好きだったのよっ!本気でっ!!」



わぁあああと大きな声を上げて、女の子みたいにしゃがみこんだ俊輔さんに固まった私は


ここが人気の無いところでよかった…


と思ってしまっている。



まさかそこまで想っていたなんて考えてもなかったから、びっくり。




「自分が好きになった男がっ…あんな最低なやつだなんてっ…そ、それにこんな小娘に助けられるなんてっ…プライドが許さないわよぉおおおおおお」



「…お、落ち着いて…」



「貢いでるってなんなのっ!!! まさか良いように使われてたなんてっ!!!」



一体どうしてあげるのが正解なのだろうとおどおどしてしまった。



失恋しちゃったんだもんね……そりゃ辛いに決まってる……元々慰めに来たのに何してるんだ。私は。





「とりあえず…公園のベンチに座りましょう?私飲み物でも買って来ますからっ!」




「…アルコールっ!アルコール買って来なさいよっ!!」



「は、はいっ!!」



彼を近くの公園に誘導して、私はコンビニに走った。気がすむまで、飲ませてあげようと色んな種類のお酒を購入する。



コンビニの袋をぶら下げて、俊輔さんのところに戻ると、可愛いハンカチで目を抑えながらまだ泣いていた。




「あの…買って来ました……」



「……さっさとよこしなさいっ!!」



「あ、す、好きなのをどう」


言い終わる前にお酒を奪い取られ、プシュっと缶が開く。そしてすごい勢いで彼の喉を通っていくお酒。




「……あー……小娘。あんたも付き合いなさいよ。」


「わ、わかりました。」


「……飲みつぶれたら殺すからね」




……殺される。やっべ。



長い長い夜が始まると私は心の中で覚悟を決めた。



仕方ない。付き合いましょう。