アイドルの素顔に夢を見るのは間違っている



だけど、これは賭け。
恋心が勝つのか、それともプライドが勝つのか。


私のことを嫌いな俊輔さんのことだから

あんたの助けなんていらない


と暴露してしまう方を選ぶ可能性もあった。


「……まさか真面目が行きすぎて貢いでるなんて知らなかった!まぁ、確かに与えられた役も貢いで捨てられるオネェの役だけど…」



もうひたすら嘘を話続けるしかなくて、後は彼次第な展開。女の子達はホッとしたような顔してるけど、BARの男はなんだか納得していないよう。半信半疑なんだろ。


「……ほら、いきなり現れた私から言っても仕方ないし、俊輔さんも何か言ってください」



どう転がろうと知ったこっちゃない。
祈るように”アイドル”をやっていくという方を選んでとそう言葉を込めた。



そして、俊輔さんが吹っ切れたようにフッと笑ったのが合図。



「現れるのが早いよ。社長」


長い髪を色っぽくかきあげて、完全に男の顔を作った。



「……あーあ…もう少し泳がせられると思ったのに。純平くんのこと。」


「な、お、泳がすって」


「…モテないからって…空気を壊すために、オネェを暴露か。せっかく楽しむためにきた彼女達にも失礼じゃない?ね」



ニコッと女の子達に微笑んだことで、彼女達の顔がかぁああと赤くなる。


本当にオネェだと知っている私でさえも騙されそうになった。間違いなく目の前にいる彼は”男”だ。



「……演技にすっかり騙されてくれて、自分の最低な部分まで暴露したの気付いてる?結婚前提にお付き合い考えてる。なんて色んな子に貢がせるのやめなよ……結婚詐欺って言われてもおかしくないから。それをオネェにもやるなんて笑っちゃう」



ガタッと立ち上がって、営業スマイル満載で手を振った俊輔さんは



「楽しかった…自信にもなったし。ありがとう。またね……良かったら俺アイドルになるから応援して」


と女の子達に発した。



「す、する!します!」


「もうファンになった!!」




最後まで凛とした姿を崩さなかった彼は、もう一度微笑んで静かに歩き始める。



「さようなら。純平くん」


鼻で笑って彼にそう呟いて。



私は大きく音を立てて


「これ、ここの支払い!!まだ無名だけどよろしくお願いします!」



お金を置き俊輔さんの後を追った。



「しーちゃん?」

「俊輔…」



凛太郎くんと健吾さんが近づいてきたことで、また女の子たちが騒ぎ出してる。これであまり疑われないだろう……男は完全に蚊帳の外だけど。



心配性だなぁ と2人に言って止まることなくスタスタ歩いていく俊輔さんの背中は、とても悲しそうだ




…………絶対傷ついてるよね……



「2人ともゆっくり帰って来て。何か食べてきてもいいし、はい。これお金。追いかけてくる!!」




いま彼に必要なのは、私じゃないかもだけどそれでも追いかけなければならない。



心のケアをするのも大切な役目だから。