「あの、お客様…何名様ですか?」
コソコソと俊輔さんの様子を伺っていた私達を見て、少し引き気味にスタッフの人が話しかけてきた。
「あ、えっと3人です……」
「かしこまりました。こちらどうぞ。三名様ですっ!!!」
居酒屋特有の大声で
いらっしゃいませー!
なんて響き渡り注目を浴びる。
一瞬、やめろー!!と思ったけどお客さん達はなれたもので全くもって新しい客に興味はなさそう。それは俊輔さんも同じ。
「ねぇおねぇさん。俺らあっちの席がいい。」
案内される場所がオネェと反対側になるということを察して、健吾さんが空気を読んだ。
良くやった!!!
「あ、わ、わかりました。」
「ありがとう。」
ニコッと歯を見せて笑った彼に、スタッフの人が少し頬を染める。
アイドルの卵としてもよくやった!!!
案内されたのは軽く敷居を挟んだ真後ろ。姿は見えないけど、声ははっきり聞こえる。
「…僕こういうガヤガヤしたとこ苦手……明らかにパーティピーポーとかいう頭の悪い人たちが集まってそうだし、いきなり巻き込まれて踊らされたらどうしよう…」
「いや、居酒屋では踊んないから。凛太郎くんの心配おかしい。そして静かに。」
3人で声を潜めて後ろの様子を聴覚で伺った。おしぼりとお水を持ってきたスタッフがギョッとしたけど、そんなものに構ってられない。
「あ、あの注文…」
「……あ、俺生」
「僕コーラ」
「烏龍茶下さい」
みんなで声を変えてゴホゴホしながら注文
スタッフは不思議そうな顔をしながら去っていった。
『ねぇ、俊輔さんは、どんな子がタイプなの??』
『んー……優しくて頼りになる子かな。後はピンチの時に助けてくれる子』
『熱出したりとかした時ー!?私すぐ駆けつけるよ!?』
も、モテてる…女に。
優しく頼れてピンチに駆けつけるとか男に求めるやつでしょ……
盛大につっこんだけど、どうやらオネェモードではないようなので安心した。
にしても……女の子がどう聞いても俊輔さんにしか質問してない。
「ねぇみーちゃん。」
「しーっ!!凛太郎くん静かに!!」
「微妙にこの席から見える男の人達、面白くなさそうな顔してるよ……」
コソコソと囁いてきた彼の言葉に、まぁそうだろうなと思う。これ、まさしく俊輔さんの一人勝ちだもん。
『……俊輔さんってモデルみたい!スラッとしてるし、イケメンだし、どこか応募すればいいのに!!』
……アイドルになるために頑張ってもらわないといけないんですけど……
キャピキャピしている女の子に、ケッと心の中で唾を吐いた。
『でも、オネェだからな。そいつ』
しかし楽しそうな笑い声は一瞬にして消え去る。聞いたことある声だけど、俊輔さんのものではない。
間違いなくBARの男だ。

