「なんですって……」
言ってしまった後、しまったと思った。
これはまだ推測であって決定ではないこと。
証拠も何もない。完全な失言だ。
「…も、…もしもの話です。騙されていたらどうするんですかっていう!仮にもアイドルの卵が!!」
言ってしまったものは仕方がないと押し通したけれど、俊輔さんは綺麗な顔を思い切り歪めて私を睨みつけている。
元から少ない信頼関係が……木っ端微塵に崩れ去る音がする…
「私みたいなオネェは恋をするのに夢を見るなってこと!?」
「そ、そんなこと言ってません!」
「あんたは男に恋したとき騙されてるかも?って思いながら接するわけ!?」
いや、それは男によるけど……
と思ったけど、ヒートアップした俊輔さんが止まらなくなった。
「……だいたい私はあんたみたいな小娘に社長をやらせること自体反対なの!蓮がそれしか方法が無いっていうから渋々承諾したけどっ!!」
「いま、そんな話しして無いじゃ無いですか!!」
「ああ、もううるさいわね!!! とにかくほっといて!!」
カバンを手に持ち大きく足音を鳴らして事務所を出て行った彼は、わざと強めに扉を閉めて行く。
……完全に扱い方法間違えた……
と後悔先に立たず。
「……あーあ。んとにあいつ恋しておかしくなってんな。」
私に任せっぱなしで何も言葉を発しなかった健吾さんの声が聞けたのは、その数分後。
「わかってるなら止めてくださいよ。」
「いやだってさ心優ちゃん。いくら男の悪い噂を伝えたところであれじゃあ”でも私は彼を信じたいの”とかなんとか言っちゃって、聞く耳持たない感じじゃん。」
「絶対言いそうで庇ってあげられない」
よくわかってると褒めたくなるくらい想像ができる光景に思わず はぁああと大きくため息をついたら
「合コンの様子見に行くのは??」
と凛太郎くんが提案してきた。
「え……でも」
「バーの隣にあるおしゃれ居酒屋で夜7時かららしいよ。」
「!!!」
「スマホ見せてきたからチェックしといた。」
凛太郎くんがとてもできる子になってるうううううううう
「…偉いっ!!凛太郎くん!偉いよっ!!」
「えへへへ。僕も行くからね。しーちゃん心配だもん」
「…凛太郎くん……もう君はほんといい子!」
褒めたら嬉しそうな笑顔を見せてくれた彼に私はそこに行くことをすぐに決める。
「…ってことで付いてきてね。健吾さんも」
「…へ」
「へ。じゃ無い。当たり前でしょ。アイドルになるためにやる気があるのは、いまや2人。危機は協力して乗り越えないと。」
自分がやるのは嫌なのか顔を歪めた健吾さんの言葉はもう聞かなかった。
何も無いならそれでいい。
でも俊輔さんが騙されたり、見世物にされるようなことがあったらなんとか阻止しよう。

