ただちびちびお酒を飲みながら、彼の動向を見張っているけれどいたって真面目なバーテンダー。


ターゲットを見誤ったかなと思ったけど、どの人も悪そうには見えない。


ダメだ……大体あんなボンヤリとした情報でここにきたのが間違いだった。しかも1人で。


バーとか行き慣れてないくせに。
なんなら場違いに感じて居心地も悪い。




諦めて帰ろうかな…明日起きれなかったら大変だし


そう諦めかけた頃



ターゲットの目の前に座っていた女の子が


「ねぇ。この前この席に座ってたイケメンの人、知り合いなの?」


と仲良さげに話しかけていた。



友達か何かなんだろうか。
先ほどまでの他のお客さんに対する接客スタイルが少し崩れたような気がする。




それにしても……イケメンって…


もしやと思って全神経を聴覚に張りめぐらせる。



「ああ……あの人、あんなにイケメンなのに実は」


「えー!うそぉ!なんかショック」



実は……

の後小声になって聴き取れなかったけれど、多分オネェとかそういうことを言ったんじゃないだろうか。



まず、お客さんのことを勝手にアウティングするなんて接客業としては最低だ。




これはついにきたかと、下を向いてさらに聞き耳を立てた。




「え、なら男の人が好きなのかな?」


「多分ね。俺狙われてるっぽいし」




きたっ!!!



お客さんに対しては、何事も抜け目なかったのに知り合い相手に気を抜いている。


確かに、他の人はバーテンダーと客の会話なんてどうでもいいだろう。


だけどいまの私はあいつと女性の会話にしか集中していない。そんなこと夢にも思ってないだろう



「……紹介してもらおうと思ったのになぁ。明日合コンするでしょ?連れてきて欲しかったのに」


「残念でした。まぁ誘ったら来るかもだけど」


「…このさい目の保養で連れてきてほしい……」



ケッ。
仮にもアイドルの卵やってるオネェが、来るわきゃねぇだろ。バーカ



なんて心の中で口悪心優が呟き、お酒を一口飲んだ。


しかしそのあとは大した情報は得られなくて、全くもって彼が詐欺まがいなことをしてるというのも尻尾を掴めない



まぁ、今日は顔がはっきりわかっただけで収穫。


残ったカクテルを飲み干して、私はお会計を済ませお店を出た。



やめといたほうがいいというには、まだ甘いな。情報が