家を出てから捕まえたタクシーが止まった場所。


月が輝くオシャレなデザインの看板が他の店に負けぬようにと、光っていた。


moon


「……着いた……」


まだ、本当か嘘かわからない不確かなものなのに
その男の人に嫌悪感しかない私は、お金を払ってタクシーを降り迷うことなくそのお店の中に入る。




少し暗い目のフロア
ブラックライトのせいか月が輝いてるみたい。


カウンター席には何人か女性がいて、バーテンダーがお酒を作りながら会話を楽しんでいた。




なんにもわからん。



俊輔さんの写真では明るかったのに……
とりあえず席にどうぞと言われたのでカウンターに座る。



「いらっしゃいませ。初めましてですね」


すると目の前にいた男性がニコッと笑いかけて来た。




……写真の人に似てる気がする。
いやでもあっちの男も、そのまた向こうのやつも似てる気がする。もはや誰が誰でも同じじゃないかと思うくらいはっきりわかんない




「えっと…初めてなんですけど、どう注文すれば……」


「今日の気分を言っていただけたらお好みのものをお作りできますし、もちろんメニュー通りのものでも」



とりあえず…訳がわからないので

カシスオレンジ

と無難なものを頼んでおいた。


やっぱり誰か連れてくるんだった…晃に頼むべきだったかな……



ソワソワと慣れないこの場に完全に押し負けていて本来の目的すら忘れてしまいそう。


カシスオレンジが無事に出されると、何とかしないとという気持ちからか早いペースで飲んでしまう。



女の子にモテそうな男を探さなければ

どれだ…一体。


目を光らせていると、先ほど接客してくれた男性が1人で飲んでいる女の子に近づくのが見えた。



カクテルを飲むふりしながらその様子を伺う



なにやらプレゼントされてるみたい……


あいつか……?


貢がせてるのか。あんにゃろ



最初は申し訳なさそうにしていたけれど、女の人に何か言われた様子でプレゼントを受け取っていた。



よく見たら高そうな腕時計もつけてるじゃん。


絶対あいつだ。そうに決まってる……




ただ、尻尾を掴まなければどうにもならない。
俊輔さんにやめておけというには、確証がなさすぎるもん。



もうしばらく見張っていよう…


私はターゲットをあの男にしぼった