「ねぇ、騒いでるところ悪いけどこの人じゃない?」


私と健吾さんのやりとりを一部始終見ていた慎太郎くんが、スマホの画面を見せつけてきた。


そこには遠目だけど、お酒を作っているバーテンダーがうつってる。



「え、慎太郎くん……どうして知ってるの?」


「しーちゃんスマホ置きっぱなしだし勝手に見た。暗証番号は、蓮くんの誕生日だし。」


「それダメなやつっ!!?」


「でもこうした方が早いじゃん。効率悪いんだもん。2人ともさ」


またソファに寝転がり、ゲームを手にした彼に私はウッと言葉を詰まらせた。



確かに……本人に聞いたところで教えてくれるかどうかはわからない。だけど、いくらなんでも勝手に人のスマホ見ちゃうのは……プライバシーだし……


悩みに悩んでる私を置いて健吾さんが俊輔さんのスマホをじっと見つめる。そして顔を歪ませた。



「…この写真…じゃわかりにくいけど…クロかも……」


「!!!??」



あんぐりと口を開けて、お節介モードが発動。



もはや社長としてではなく、心優としてこの問題に向き合うべきなのかと考えた。



「く、く、クロってことは、やっぱり詐欺師?」


「いや、詐欺師きわきわって感じだからなぁ。キャバ嬢みたいなやり口」


「法で裁けないとか余計に厄介じゃん!!!」



もはやプライバシーがどうとか言ってられないと、健吾さんの持っているスマホを覗き見してしまう。



彼の言うようにわかりづらいけど、なんとなく雰囲気はわかった。



「……どうする?心優ちゃん」


「…いまから行ってくる。気になって眠れやしない」


思い立ったら即行動。
これが私の性格だ。


片付けも終わったので、腕まくりしていた服を直し、バーに向かうべくこの家を出る準備をはじめる。



「大丈夫なの?心優ちゃん」



上目遣いの凛太郎くんが心配してくれているけれど、この件は放っておいたら大変なことになると思う。



「大丈夫。任せて!」


グッと拳を作って、俊輔さんがお風呂から出てくる前に家を出た。




「……うちのマネージャーは頼もしいなぁ。凛太郎」


「うん…」



健吾さんのこんな声が聞こえたけど、んなこと言ってないで手伝ってくれればいいのに。こんにゃろと思ったのは内緒にしておこう。