ご飯を食べて後片付けを始めた頃


俊輔さんはご機嫌に鼻歌を歌いながら、浴室へと歩いて行った。ふわりと香る甘い香水のせいで彼が男であることを忘れてしまいそうだ…。


「……はぁ。」


洗い物をしながらついつい漏れたため息に反応したのは健吾さんで、私のそばにやってくると洗ったものを拭きながら話しかけてくる。



「もしかして、ムーンに行こうとか思ってる?」


「……ご名答」


「だよねっ。心優ちゃんお節介だから」


本人は褒めてるつもりなのかニコニコ笑顔だが、お節介というワードは私の中でひっかかりがあった。



まぁいいか。本当のことでもあるし。
にしても私は奴らの社長で、別にお節介で相手を見に行くつもりではない。


これはあくまで社長としての業務だ。



「健吾さんも一緒に来る?」


「………僕が行きたい」


「凛太郎くんは未成年だからダメ」


私の言葉にしゅんと悲しい顔をした彼に罪悪感が生まれた。可愛いけど、こればっかりは……


だけどそのあとギロリと健吾さんを睨みつけていた、よしいまのは見ないふり。



「いや、行かない」


「……あ、そう」


「ムーンのバーテン多分知り合いだし。」


「ふーん……」



あっさり流しそうになったが、いまの言葉に

へ?


と間抜けな声が出る



「え、し、知り合い??」


「いや、多分だけど。パチンコ仲間の友達か何か。俊輔が惚れてる相手かどうかはわかんないけど……ちょっと気にはなってる」


「なにに!?」


ついついスポンジを放り出して健吾さんに詰め寄ると彼はポリポリと頬をかいた。



「……いや、聞いたことあるんだけどさ……結婚詐欺紛いなことしてるっぽくて……女騙しては貢がせてるっていう」



遠慮がちな健吾さんに私はカッと目を見開く。



貢がせてる……

それっておネェも狙われるの!!?!!?



「ど、ど、ど、どうしよう!!」


「いや、落ち着いて。まだそいつだって決まったわけじゃないし…」


「……いや決まってからじゃ手遅れになるっっ!!!」



「うぉ!ちょっ!泡!泡が俺の服にっ!!」



彼の胸ぐらを掴んだせいで、洗剤の泡がたっぷりと装飾された。


しかしそんなものに構ってる暇はない。



「俊輔さんにどんな人か聞いて!!メンバーの一大事よっ!これは!!」