近くの喫茶店で、モーニングセットを頼み2人で食べる。健吾さんはソワソワと時計を見ていた。


「どうして時計なんて気にしてるの……」


「え、あ、いや」


「パチンコ店には行かせないわよ。」



紅茶を飲みながらそう釘を打てば

どうしてわかるんだ……

と言ったような顔で彼はコーヒーを。



わかるに決まってんでしょ。
昨日全部すったくせにどうしてパチンコになんかいけるのよ。馬鹿すぎる。


こうはなりたくないなとパンを頬張って、仕事の流れを考えた。


事務的な仕事や、レッスンなんかよりまずやつらの食生活の見直し考えたほうがいいよね……


いや、いっそ生活習慣から見直させるか。



頭の中で構成を立てていたら私の携帯にアプリからメッセが届く。


「あ、凛太朗くん」


彼からは1日に恐ろしい量のメッセが来るけれどもう慣れたものだ。返事もできるだけするようにしているし。ただ今日は内容が違った。



”熱が出ちゃった……ごめんなさい”



「あ……」


目の前でゆで卵を向いている健吾さんに目線をやれば


「熱出した?」


なんて笑顔。



……すごい。ギャンブルは全然ダメなくせに。



「お見舞いにいかなきゃ。ちゃんと病気しにくい体づくりもしてあげないとね……あの子」


「あー…凛太朗は特別弱いからなぁ」


「それにしても、健吾さんってみんなのことよく見てるの? 誰も気づかなさそうなことに気づくのね」


「いやぁ俺、親の顔色伺って生きてきたから人の様子みるのは得意なの。」



ぽつりと彼が溢した言葉に私の手がピタリと止まる



「……え……」


「親父が酒癖悪くてさぁ……DVっての?殴られないように必死必死」


笑顔なのに言ってることは爽やかじゃなくて、とてもじゃないけど笑い飛ばせなかった。



もしかしたらみんな何かしら抱えているんだろうか。まぁそれは私も同じなんだけど。


「……どうしてお母さん…由乃さんに出会ったの?アイドルやろうと思ったきっかけは?」


「いや、全然わかんない。家出てから毎日バカみたいにギャンブルして、金なくなってホームレス状態の時に拾われたし!恩返し?」



「はぁあああ??」




いや健吾さん確かにイケメンだけど、よくもまぁホームレス状態の中から見つけたな。あの人



「由乃さんには感謝してもしきれない。借りてたお金も返さないといけなかったのになぁ」


「お母さんにも借りてたわけ?」


「そう……だからさ、コツコツ貯めようと思って。いつか娘の心優ちゃんに返すために頑張るわ俺」



ニコッと微笑んだ健吾さんに、感動を覚えたじゃないか。
そうか…そんなことを考えて……


しかしここでおかしいことに気付く。


「………」

「いつか絶対倍にするから、心優ちゃんもお金かして!!それで返すから!!」



これは、ギャンブラーじゃないやつの口から聞きたかった!!!!




「……もういっぺんホームレスに戻すぞ」



「あ、は、はい…すみません……」




全く。油断も隙もないわ