シャワーを浴びて、晃のチャーハンを食べて、一緒に後片付けをした後、缶チューハイを飲む。5人の愚痴を肴にして、飲んでいると彼はニコニコしながらそれを聞いては優しく慰めてくれた。


私、晃がいなかったら今頃精神的にやられて死んでいたかもしれない。そう思うほどに彼の存在は、大きかった。







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翌日ー

ピリリリリと鳴り響いたアラーム


どうやらいつの間にか眠っていたようで、いつもの同じ時間になる携帯を止めて寝ている晃を気遣いソッと布団を出る。


また今日も、やらなきゃいけないこと山積みの事務所に行くんだなぁ……


ずっと隣で寝ていたい願望を振りはらい、着替えを済ませて、彼の頬にソッとキスした。


「行ってきます」



とても清々しい気分だ。


今日はなんだか穏やかに過ごせそうな気がする……


そんな気持ちで事務所を開けたというのに


すぐにゴミ箱に投げられた。



「……うそでしょ…」


机の上には食べっぱなしのカップヌードル、缶詰

なぜかソファーの上で寝ている健吾さん

布団代わりに新聞

こいつは本当にアイドルしてダメかもしれないと悟る。


どこのホームレスだよ…お前っ!!



「なにしてんだ!起きろ!」


ペチッとおでこを叩いたら、んーと顔を歪めて目を開ける彼に、私は精一杯の睨みを利かせた


「あ、はよー…マネジャー」

「はよー。じゃなわよ!なにこの有様!家に帰ってないの!?」


「いや、昨日さ、欲望に負けてスロットしに行っちゃって、見事に全部すったせいで帰れなくなってさ……俊輔も蓮斗も迎えに来るの嫌とか言うし、仕方なく事務所借りて寝てたんだよ。」


やばい…

ぶん殴ってやりたい



「ほんとにほんとにほんとにバカなんじゃないの?」


「え、どうして?」


「どうして?じゃないわ!! 自分の身を削ってまでギャンブルなんてするな!!」



「いやぁ……しないでおこうと思えば思うほどしたくなるというか…なんというか」



健吾さんはボサボサの髪を掻きながら、大きく口を開けてあくびまでした。本当に爽やか要素がゼロすぎて、頭がいたい。



「昨日はそれしか食べてないの!?」


「うん。おまけにいえば金がないから今日からしばらくはひもじいかな。」


「……着替えて!! とりあえず朝ごはん食べに行くから!!」


凛太朗くん同様

放っておけない!!

この人も予想はしていたけど、食生活が全くもってなっていないんだもの。


私の中で、安心してるのは俊輔さんのみ。


美容に徹底してるということは、きっとご飯もきっちり食べているだろう。凛太朗くんは、私がここで作ったもの食べたりしてるしまだマシかな。



「え、奢ってくれんの!? マネジャー」


「そうよ!! 今日は誰かに会う予定もないし、ちゃんと真面目にやるならおごってあげる。」


「うわぁ。助かるわ……サンキュー」


へへっと笑った彼は、立ち上がって伸びをすると練習用のジャージを羽織った。


「……にしてもマネジャー…今日いつもと違う香りがするんだな」


「はぁ?香り?」


突然の言葉に顔を歪めると、いきなり近づいてきた健吾さんが真近で匂いを嗅ぐ。この少なすぎる距離感に私はつい、ぶるっと震えた。



「いつものシャンプーと香りが違う。」


「?!」


この人……そんな小さいことわかるの!?


「……あたりでしょ?」


「よ、よくわかったね…昨日彼氏のところに泊まったのよ」


「あ、やっぱり?俺そういうの敏感なんだ。なんなら今日他の奴らの状況予想してみようか?」



ニコニコと楽しそうに笑った健吾さんに、


「参考までに聞いとく」


と返事をしたら分析がはじまる。


「凛太朗だけど多分慣れないレッスンで今日あたり熱が出るな。あいつ身体弱いから。慎太郎は、今日ゲームのイベントあるから来ない。蓮斗は、昨日電話でいつもの女と話してた。その子夜の仕事の子だし、来るなら昼からだな。俊輔はおネェだけど真面目だからいつも通り」



突然事細かに他のやつらのことを話し出した健吾さんに思わず感心。



当たってるかどうかまだわからないけれど、自信満々なのでその通りになる予感がするじゃないか



……見てないようで、見てるんだな。この人は