ずっとぐちぐちパチンコのことを言う、バカを連れて事務所に入る。今後の動きの予定を立てようと私が机に向かうと


「あら、健ちゃん見つかっちゃったの?」


なんて鏡を見ながら髪をとかしてる俊輔さんが健吾さんに声をかけていた。



「マネージャーったら酷いんだって…今日は、絶対出たのに。絶対出たんだよ。」


「なんでもいいけど、この前貸した一万円早く返してくれる?新作のカバンが出たから欲しいのよ。」


2人の会話を聞いて、ピクッと眉が動く。


「…それなら俺のも返せ。2万」


そして蓮斗さん


「あー!僕も!アニメグッズ買いたいから返して。五千円」


「僕も……返して欲しい」


そして慎太郎くんに凛太朗くんまで。



「いや、みんなすまねぇ!! この前全部すっちまって、今日取り返す予定だったというかなんというか……」


一番年上とは思えない言動に、思わずダンッと机が揺れて彼の肩がビクッと震えた。



「……借金してるのに、ギャンブルするつもりなの……??」


「あ、え、えっと、心優ちゃーん。顔が怖いというか……あ、はは」


「いま、正直あんたたちニートなのよっ!!! レッスンして基礎学んで、曲出して、ライブして、ファンがついて、やっとお給料が発生するの!! それをギャンブル!?ぶっ叩くわよっ!! お母さんは給料あげてたみたいだけど、私はそうはいかないんだからね!!! 」


「……え……うそ!? も、貰えないの!?」


「当たり前よ!! 今回から最低限の生活の面倒とお小遣い程度しか渡さないから!!!」



私の言葉に絶望という顔をした健吾さんは、


これから……なにを楽しみに……


と静かに崩れていく。



「……厳しいのね。小娘」


「当たり前ですっ!! 真面目に練習でてる凛太朗くんと俊輔さんときっちり格差つけますから」


「やったぁ。僕手錠でも買おうかな。」


「え、凛太朗くん、て、手錠買うの?……まぁ、お小遣いだし何に使ってもいいけど、他の奴らは真面目にやらない限り0もあり得るから」



ここまで言えばさすがに危機感を覚えるだろうと思ったけど、健吾さん以外には効いていない様子



「僕、べつにゲーム買うのとアニメのグッズ買う以外はいらないし、貯金なくなったら練習しよーかなぁ」


「…な、んですと?」


「悪りぃけど、俺は女に貢いでもらえるからな。金の心配は無用だ。」


「いや、もうクズっ!!アイドルの発言とは思えないっ!!!」



慎太郎くんと蓮斗さんのダメさに思わず顔を抱え込んでしまった。どうしてこうも向上心が見当たらないのっ!アイドルになりたいとか言う割に!!!



「……まぁ蓮斗は練習でなくても才能あるから、確かに基礎はいらないかもね。」


「俊輔さんは彼に甘すぎですっ!!」


「……あら、由乃さんが一番に拾ったのも蓮斗なのよ。」



え……といきなり出てきた話に私は動きが止まる。


「……付き合いが一番古いものね。」


「…まぁな。」


そうなのか。拾ったというのはどういうことなんだろう。詳しく聞きたいけれど、……今はコソコソと出て行こうとしているこっちだ。



「健吾さん……どこに行くつもりですか」


「ぎくっ」


「ぎくっじゃありません!見えてますからね!!!」



まだまだお母さんに関する知らないことが湧いて出てきそうで、なんだか怖い。


そして、ギャンブラーのお金の使い方が恐ろしくて怖い。