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喪主の男性はどうやら母との古い友人らしい。
相続のことや、会わせたい人たちがいると電話越しで、やり取りをし今日になった。
葬儀場で唖然としたのは、人の多さ。
みんなポロポロと涙を流しながら母へ別れを告げている
皮肉なものだ……
娘には何1つしてくれていないのに、こんなにも人に愛される人だなんて。
遺影に映る母は、化粧バッチリでとても綺麗だ
眠っている顔を見たけれど、やはり思い出がなさすぎて涙すら出てこなかった。
……私のこと覚えてるのかな……
もっと早く……会いに来てくれたら何か変わっただろうか
おばあちゃんのお葬式に来てくれれば、この行き場のない怒りは消せただろうか。
なんどもお母さんの名前をつぶやいていたおばあちゃんを思うと、やはり私はこの人が許せない。
この場にいる私だけが、驚くほど場違いな気がしてならなかった。
みんな悲しんでる……私は?
中でも神妙な顔して悲しそうな顔をしている5人組が印象的。雰囲気は個々に違うけど、みんな顔が良い。もしかしたらお母さんの隠し子かなって考えたり。
私を残して行った時まだ若かったんだもん。
子供がいたっていまさら驚きはしない。
葬儀は事なきを得て、私は母と本当にさよならをした。
……私、貴女に育ててもらえなかったけど21になったよ…去年成人もした……。母親とは思ってないけど、生んでくれた事はお礼言っとくね。
心の中でそんなことを呟いて、見送りをすませる。
本当は……会った時どんな風にボロカスに言ってやろうか考えてたのに。
ふざけんな色恋ババアとか
娘より男が大事ってどういうことだよとか。
なのに死んでしまったらそんなことも言えない
結局お礼になってしまった……
まぁ最後だからいいか。
喪主を務めてくれた男性に頭をさげると、待つようにいわれたのでおとなしく待っていた。
しばらくして扉がノックされたと思うと気になっていた5人のイケメンたちが入ってくる。
……え
何事なのかと思った。
相続の話をしたいとかなんとか……
遺書もあるだとか……
もしかしたら本当に母の子供で、お前には無一文渡さないとでもいうのか。
それなら要らぬ心配だ……私は相続権を放棄する予定ではあったし、話はうまく進むだろう……
「葛西心優さん……ですね?」
いろんな想像を張り巡らせた私にニコリと髪が長めの男性が艶っぽく微笑んだ。
男の人なのになんて美しいんだと思った束の間
心優へ
と書かれたものが私の目の前に置かれる。
「私の名前は、南俊輔(みなみしゅんすけ)です。ここにいる全員が由乃さんにお世話になってて、最後も看取りました」
「…そうですか……」
「娘に渡してほしいと言われた遺書です。お読みください」
……あの人の息子じゃないのかな…
いやまだ油断ならないけど。
私は言う通り母の遺書を開いた。