雪の日に祝福を…。

   


 春だというのにチラチラと白いモノが舞う。


「今までありがとう、楽しかった。」


「うん、俺も凄く楽しくて・・・倖せだったよ。」


 視界を遮るような雪。


「燵夜くん・・・私夢を追わない父親の言いなりの君を棄てます。」


「うん。さようなら・・・若狭さん。」


「さようなら・・・千明くん。」


 雪が2人の表情を隠していく。


「来なさい。」


 父親の呼ばれて歩き自分の横を無言で通り過ぎていく。
 冷たい車のドアの音が世界を閉ざし走り去る音が世界を壊した。

 周りでは、なごり雪に歓声が上がっていた。

 状況を整理したいのに激しい頭痛が邪魔をする。


「燵夜くん・・・・・・。」


 胸の苦しさと頭痛の激しさで意識を手放した。


 》 》


 独りになる否、独りで居る宿命だったのだ。
 誰かの傍に居ても私は、独り。

 その想いが私を支配した。

 消えてしまおうと思った。
 だから寂しくなんかない。そう、言った。

 いまでは、本当に独りになることは出来ないと解っている。
 私は、いまでも誰かの手助けがないと立っていられない。

 親しい人が居なくても平気ではある。