「ハーローウーイーン?」
なんだか間抜けな名前だな。
俺は内心でそんなことを呟きつつ首を横に振った。
「・・・ハロウィン」
「・・・ハローウィーン?」
まあ、さっきよりはましなので俺はそれでいいよと言うように豆腐小僧の豆吉【まめきち】頷いた。
それに豆吉は嬉しそうに笑った。
豆腐小僧の豆吉はいつもザルの上に載せた豆腐を持っている。
それに意味があるのか、ないのか俺は知らない。
まあ、名前が『豆腐小僧』なのだからきっと何かしらの意味があるのだろう。
それにしたって豆腐小僧の豆吉は怖くない。
豆腐を意味もなくザルに載せて持ち歩く、顔ののっぺりとした幼い子供・・・。
俺はそう豆吉を認識している。
豆吉の服装は着物に被り笠。
まあそこは妖怪らしいのかも知れない。
けれど、他は・・・。
「オイラも出ていいの?」
綺麗な瞳を輝かせて問うてくる豆吉に俺はコクリと頷いた。
怖くはないが愛らしさはある豆吉だ。
それは変なコスプレイヤーより輝く。
「いいなぁ。豆吉は出れて」
まだ幼い愛らしい少女の声に俺は戸惑った。
配慮が足りなかった・・・。
俺はそう反省をした。
その声の主は座敷童子の小袖【こそで】だった。
小袖は先生の家に住み着いている座敷童子でこの度のハロウィンの仮装パーティーには出られない妖怪だった。
座敷童子は精霊的な妖怪であり、守護神的な妖怪でもあると俺は先生から教えられた。
そして、その座敷童子の数は今は少ないと先生は言う。
座敷童子は精霊的な妖怪。
それはすなわち、清らかなるモノと言うことだ。
今の世の中は汚い。
つまり、それは座敷童子には生きにくい世の中と言うことだ。
座敷童子を殺したのは人間だ。
その人の世に小袖が向かうのは夏虫が火に飛び込むのと同じことを意味する。
その事は小袖本人もよく知っている。
だからこそ、もっと配慮するべきだった。
ここは先生の家の庭なのだから小袖がどこで聞いていてもおかしくなかったのだから・・・。
「・・・ごめん」
俺は小袖に謝った。
それを小袖は笑った。
それは屈託のない暖かな笑みだった。
「お土産、よろしくね」
小袖の珍しいわがままに俺はただコクリと頷いた。
そんな俺の足元で豆吉はザルに豆腐を載せたまま「お土産、お土産」と飛び跳ねた。
ザルの上で豆腐は不安げにふるふると揺れていた。


