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「咲里亜ちゃん、本当に大丈夫?」

だいぶ歩けるようになったから帰ろうと席を立つと、みち子ママが心配そうに見送ってくれた。

「すぐ、タクシー捕まえますから」

「あ、だったら呼ぶけど」

「酔いを醒ましたいので少し歩きます」

「そう。気をつけてね。あと耳鼻科も忘れないで」

「わかりました~」


酔いを醒ましたいのは本当だけど、どのくらいちゃんと歩けるだろうか。

ボロボロの吊り橋を渡るような慎重さで一歩一歩前に進む。
やっぱり無理だな。
早めにタクシーを拾おう。

道路沿いをタクシーを探しつつ歩く。
歩くことに集中していないから、足取りはさらに乱れた。

向こうにタクシーのランプが見えて「あ!」と駆け寄ろうとしたが、脚だけはまったく反対側によろけて電柱にドンっとぶつかってしまった。

うううう、情けない・・・。

座り込んでいる間にタクシーが通り過ぎていく。
わずかばかりのネオンすら、私を笑う。

「咲里亜さん!大丈夫ですか!?」

急に背中を支えられて顔を上げると、伊月君が心配そうにのぞきこんでいた。
この人はアルコールよりはるかに私の体温を上げる。

「伊月君、どうしたの?風見さんは?」

「・・・二次会に置いて行かれてふらふらしてたら、咲里亜さんが倒れてたので。風見さんはタクシーに乗せて帰しました」

送っていってあげなかったんだ。
そのことにちょっとホッとして、ホッとした自分が嫌で眉間に皺が寄る。