ふと店内を見渡すと、田山課長がポツンと座っていた。
両隣の人がそれぞれ反対側の人と話しているからだ。
タイミングが悪いとそういうことはあるけれど、さすがに課長を一人にしておくわけにはいかない。
「はい。咲里亜ちゃん」
私の行動に気づいたみち子ママがさっとお銚子を渡してくれる。
ありがたく受け取って課長の隣に滑り込んだ。
「課長、お疲れさまですー」
「ああ、咲里亜さん。どうもどうも」
課長はお猪口に口をつけると、私にもすすめてきた。
日本酒は全然得意じゃないんだけど、ここで断ったり違うお酒を頼むのも面倒だから飲んだ。
むー、お酒臭い。
「咲里亜さんは最近どう?」
「うーん、まずまずです」
「充実してる?」
「いやー、仕事は頑張ってますけど、プライベートはスカスカですね」
「富樫君のことは考えてくれた?」
「誰ですか?」
「前に私がおすすめした男性。富樫充君。富樫君の方はぜひ会ってみたいと言っていたんだけど」
え・・・その話、進んでたんですか?
名前すら今聞いたところなんですけど。
「いやっ、まあ、はあ・・・えーっと?」
「別にすぐ結婚しろって言ってるわけじゃなくて、会ってみるだけ会ってみてもいいんじゃないかな?今付き合ってる人もいないんでしょう?」
「・・・いませんけど」
「茶飲み友達を一人増やすくらいの軽~い感覚でいいから。そう難しく考えないで」
「はあ、うう、まあ、機会がありましたら・・・」



