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部内の誰かの何かの大きな仕事が片づいた、という曖昧な理由での飲み会が〈サードゴロ〉を貸し切って開かれている。
飲み好きな人がいると、何かにつけてこういう会が開かれるのだ。

「咲里亜さーん、お疲れさまー。ちゃんと飲んでるー?」

飲み好きな人・良二さんは、主催者らしく先頭切って酔っていた。

「飲んでますよー。ちゃんと食べてますよー。良二さんも食べてくださいねー」

たちの悪い酔っぱらいじゃないから、ニシンの骨を避けながら適当にあしらう。

私がこんな細かい骨まで丁寧に丁寧に取っているのは、お上品に育ったから、なわけはなく。
ちょっと首をひねると楽しげに話す伊月君と風見さんの姿が目に入ってしまうからだ。

ニシンの骨が細かくてよかった、と思うのは後にも先にも今日だけに違いない。

「えー!伊月さんって、あの通り沿いのショップでお洋服買ってるんですか?私もあのレディースライン好きでよく行きます」

「俺はたまにしか行かないけど、風見さんには似合いそうですね」

「そうですか?あそこは高くてあんまり買えないから、いつも安物ばっかりなんですけど」

「華やかで職場が明るくなります」

「・・・あ、ありがとうございます」


やっぱりこのくらいの小骨は食べてしまった方がいいな。
イライラにはカルシウムが必要だって言うし。

例えこの店にあるすべての小骨を食べたところで、私のイライラが収まらないことはわかっている。

また、カルシウムによってイライラを押さえることに成功したとしても、悲しみを押さえることはできないともわかっている。