「余計なお世話だけど、あんまり無理しないでね。誰も助けてくれないんだから、自分の身は自分で守らないと」
「前より引き受ける量はセーブしてるので大丈夫ですよ。そんなに危なっかしく見えますか?」
「うん。自ら苦難の道を選んでいるように見える。なんかの修行でもしてる?」
「修行って、そこまで立派なものじゃないですけど━━━━━」
伊月君は一度言葉を切って、少し考えてから続けた。
「咲里亜さんに言われて〈得得ポイントカード〉だと思うようになったんです」
「得得ポイントカード?」
そんなアホっぽいこと言ったっけ?
「一生懸命頑張ったり、いいことしたりするとポイントが貯まって、いつかいいことがあるんじゃないかなーって」
『得』って『人間性の徳』とかかってるのね!
いや、全然うまくないよ。
「その『いいこと』って何?『いつか』っていつ?」
「わかりません。どのくらいの大きさの『いいこと』なのか、いつくるのか。死ぬ間際かもしれないし、死後の世界でのことかもしれないし。だけど頑張っていればポイントが貯まってるんだって思えるようになりました」
それは、プラス思考なんだろうか・・・。
伊月君の考えることってよくわからない。
「なんか宗教みたいだね」
「発想の原点は近いかもしれませんね。『そうでも思わなきゃやってられない』ってことですから」
淡々としているようで、伊月君だって悩んだり苦しんだりしてるんだろうな。
当たり前か、人間だもんね。
「伊月君にとって毎日がポイント2倍デーだといいね。頑張って」



