ダンボールを抱えているのに速い背中を、必死に走って追いかける。
「伊月君!」
課の入り口でなんとか足止めに成功した。
振り向かれると、視線を受け止め切れなくて困るんだけど、今は仕事の話だ。
「さっきの案件ってもしかして庭の立木の一部ってやつ?」
「そうです」
「国家ぐるみで家を追い出される」って騒いでるやつだ!
ひえー。またこの人は!
「伊月君、大丈夫なの?また面倒事ばっかり引き受けてるんじゃない?」
「大丈夫です。新たに増えた案件は全部良二さんが持ってくれたので、むしろ助かりました」
「そっか。それならいいんだけど」
気持ちの上では助けてあげたくても私は所詮別の課の人間。
本人がいいって言う以上どうすることもできない。
伊月君だって大人なんだから、例え無理してたって結局は本人がどうにかする以外ないのだ。



