こ、断りにくーーーーい!

別に上司からの縁談だからって圧力があるわけじゃないし、課長の性格からいっても単純なご好意だとわかる。
わかるだけに断りにくい。

彼氏がいるならそう答える。
でもいない。
嘘をついても同じ課内だからきっとすぐバレる。

・・・じゃあ、受ける?

45歳かああああああ。
芸能人だと45歳でも50歳でも「全然いける!」って思える人はたくさんいるけど、絶対違う。
たぶん普通におじさんだ。

いや、私ももう30歳を迎え〈おばさん〉と言われても顔をひきつらせるだけで否定はできない年齢だけど。


人間性が確かなら年齢や外見がどうでもいいかと言われると、そうも言えない。
何しろ人間性とキスするわけじゃないのだ。

今の話だとマイナスポイントは年齢だけ。
それで拒否するのもどうかと思う。

だからって、一度会って拒否したら、それはもう誤魔化しようがないじゃない。

未然に防ぎたい、未然に。
私はまだ、ときめいて結婚することを完全に諦めたわけじゃないんだから。

かなり、自信は失っていたとしても。


「あら~、田山さんダメよ~。咲里亜ちゃんは私の孫の嫁にするんだから」

両手にホッケを持ったみち子ママが私とテーブルの間に割って入ってくれた。

「ママの孫って今いくつ?」

「今年受験だって言ってたから━━━━━」

高3か。
まあ18歳になっていれば結婚は可能だ。

「14歳か15歳かしら?」

って、中学生!?

「みち子ママ、さすがに中学生は犯罪になりますよ。あと10年したらもう一度お願いします」

10年後に独身だったら本気でお願い!

「ええー!咲里亜さんは年下がいいの?」

課長もさっきよりずいぶんくだけたトーンでがっくりと肩を落とす。

いや、全然。
年齢ならむしろ少し上くらいが理想だけど。

「課長~、かわいい年下男子が嫌いな女はいませんよ~」

私を逃がそうとしてくれたみち子ママの好意を無駄にせず、いそいそとカウンターに戻った。