大人のいない世界

「そういえば、今日はナナの誕生日だよね。

十六歳の」


広汰おにいちゃんが、そう言った。


「そろそろ、“あの世界”へ連れて行かなくちゃ」


その言葉を聞いて、私はドキッとした。


そうだ。

十六歳になれば……美佳ちゃんのように殺されてしまうんだ。


「そのことなんだけど、広汰おにいちゃん………」

「ん?」


もしかして、この世界にいる十六歳は、全員殺されているんじゃないの?

大人の世界なんて、本当は存在しないんじゃないの?


と聞こうとして、私はそれをやめた。


だって、どうせそんなことを言ったところで、広汰おにいちゃんも鈴ちゃんも私のことを信じない。

ナナ達のように……。


その上、そんなことを言ってしまったら、広汰おにいちゃんを疑っていることになってしまう。