大人のいない世界

「別に、違うよ。

ただ、なんとなく来てみただけ」

「そっか。

あれ?翔と舞衣は?

一緒じゃないの?」

「二人は…………。

ナナの家にいる」


私がそう答えると、つまらなさそうに推理小説をパラパラと読んでいた鈴ちゃんが、


「なんでそのちびっ子二人があいつの家にいるのよ?

あんたが面倒見てる子達なんじゃないの?

保護者交代?」


と、少し嫌味っぽく言ってきた。


確かに………翔と舞衣にとっては私よりも、ナナといるほうが幸せなのかもしれない………。

ナナといるほうが、二人はいつも笑顔を見せているし…………。


「そんなところかな……」


私は、小さく呟いた。