大人のいない世界

「なんにもないよ、おねえちゃん。

ねえ、どうしておねえちゃんはぼくたちをここまでつれてきたの?」

「し、翔…。

違うの、私は…私は………。

みんなに知らせたくて……この世界が危ないって、教えようと思って…………。


なのに、どうしてなの……。


美佳ちゃんの部屋にあった血も、この窓ガラスも…………。


どうしてみんな、元通りになっているの!?」


「おねえちゃん、もうかえろうよ」


舞衣がそう言って、私の服の裾を引っ張る。


「駄目だよ。

確かに、窓ガラスは割れていたんだから………。

絶対に。


そうだ、私は勘違いをしていたのかもしれない。

割れていた窓ガラスはここじゃないのかも……。

違う部屋の窓ガラスが割れていたんだよ。

そうだ、そうだよ…………!」