大人のいない世界

そうだ。

あれを、みんなに見せよう。


そうすれば、みんなはきっと危機感をおぼえるだろう。

どうして、今でそのことに気付かなかったんだろう。


まだ、ナナが十六歳になるまでじゅうぶん時間がある。

行くなら、今しかない。


「ナナ」

「どうしたの?杏奈。

やっぱり、ホットケーキ食べる気になった?」

「違う」


やっぱり、ナナはのんきだ。

そののんきさに、苛立ちを覚える。


「ナナ、今すぐ行こう」

「行くって……どこへ?」

「決まってるじゃない、美佳ちゃんの家だよ。

あれを見れば、きっとみんな信じるよ!

美佳ちゃんが、殺されたって!

この世界は危険なんだって!」