大人のいない世界

お母さんのことは嫌いだったけれど、お母さんの料理は大好きだった。

でも、もうあの味をこの舌で感じることはできない。


お母さんは、大人はもうこの世界にはいないのだから。


あの日。


寒い冬の夜のこと。


お父さんとお母さんの部屋から二人の悲鳴が突然聞こえて、行ってみると、お父さんとお母さんは倒れていた。


正確には、死んでいた。


広汰おにいちゃんが、殺してくれた。


あのときのクセのある髪と、無邪気な笑顔は、今でも変わらない。