「よかった………」


あたしはホッとした。

もし、あのままナナが目を覚まさなかったら……と思うと、ゾッとする。


「ナナ、さっきすごくうなされていたんだよ。

『許して』って何度も何度も繰り返し言っていて…まるで呪文みたいに。

すごく怖かったんだから」


私がそう言うと、ナナはまた少し苦しそうな表情をして言った。


「そう………。

あのね、私…夢を見ていたんだ」

「夢……?

それってもしかして、大人がまだいたときの……大人がいた世界の夢?」

「そう。

夢の世界では大人が……、お父さんがいたの。


お父さんがね、何度も何度もあたしの体を殴ったり蹴ったりするの。

だから、あたしは何度も何度も『許して』って言うの。

でも、お父さんはやめないの。

ずっとずっと、あたしに暴力をふり続けるの」