大人のいない世界

『どうして、こんな簡単な問題も解けないの!?』

お母さんの怒鳴り声と、パンッという乾いた音。
そして、頬に走った鋭い痛み。


それらですべてを理解した。


これは、まだ大人がいたときの、私の記憶だ。


『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい………』


私は、ただひたすらお母さんに謝って、泣きながら鉛筆を握って目の前の算数のプリントを解こうとする。


『だから、そこはそうじゃなくて………。

ああ、もう!
何度言ったらわかるのよ!!』

『ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんなさ…………』


謝っている途中で、お母さんに思い切り頭を殴られる。

『謝ればそれでいいと思ってるの!?』


そんなことを言われても、私には謝るしか術がなかった。


『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』