とにかく、今はこの状況をどうにかしないと。

扉の向こうには、たくさんの大人と十六歳の人達を殺してきた広汰君。

目の前には、春子と実君を殺した鈴。


まずは、鈴をどうにかしないと。

ここに、武器になりそうなものはない。

力比べなら、男の俺が負けるはずがない。


とりあえず、鈴の動きを止めて………。


と考えていたそのとき。


ガチャンッ!と大きな音がして、扉が開いた。


「鍵なんてさ、ようは壊しちゃえばいいんだよねぇ」


ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべ、広汰君は俺に言った。

そうだ、こいつは大人を皆殺しにしてきて、しかも杏奈と同じ声を出せる化け物だった。

そんなやつに、正攻法が通じるわけがない。

どうして、俺は今までそのことを忘れていたのだろう。