大人のいない世界

そう言って、俺は鈴を部屋の隅に追い詰める。


「なによ、急に…………」

「おかしいと思っていたんだよ、二人が自殺したときから。


春子は広汰君のことを“広汰さん”と呼んでいた。

それなのに、遺書には『広汰“君”』と書いていた。

だけど、そこまでは、まだあまり春子の死に疑いは持たなかった。


でも、実君の遺書を俺は二人の死に疑問を抱いたんだ。


実君が遺した遺書と、春子の遺書に書かれている字のクセが似ていたんだ。


同じ人物が、春子の遺書と実の遺書を書いたってことだ。

もちろん、俺はそんなことをした覚えはない。

となると、犯人はお前か杏奈のどちらかだ。


杏奈の字かどうかは、杏奈が書いた日記を見ればすぐにわかった。

あれは、杏奈の字ではない。


つまり、お前が二人の遺書を書いたんだ。


おそらく、お前は寝ている春子を殺し、凶器である包丁を彼女の手に握らせて、彼女が自殺したかのように見せたんだ。

実君のときも、同じようにな」