大人のいない世界

私が話を終えると、広汰おにいちゃんは静かに目を瞑った。

そしてゆっくりと目を開き、私の目を真っ直ぐ見て言った。


「残念だけど、それは無理だよ」


抑揚のない声。

広汰おにいちゃんらしくない、どこにも優しさや思いやりのない言葉。


「え………どうして…………………?」


それは無理って、そのまんまの意味だよね?

翔と舞衣に謝ることも、一緒に生活することもできない……っていう意味で合っているよね?


「どうして、おにいちゃんはそんなことを言うの?」

「……忘れているのか、杏奈」

「忘れている?

一体、何を?」



「今日は、君の十六歳の誕生日じゃないか」