「じゃあ、もしかしてこの森の奥には………!」

「ああ、大人の世界がある。

今まで消えた十六歳のみんなが暮らしている世界が、あるんだよ」


そうか…。

ナナは、ただ広汰おにいちゃんに大人の世界へ連れて行かれただけなんだ。


それなのに、私は怖い思いをして、でも頑張ってわざわざこんな森まで追いかけてきて………。

とんだ取り越し苦労だったってわけだ。


「なんだ………そうだったんだ」

「今さっき、ナナを大人の世界へ連れて行ったよ。

そろそろ、杏奈も十六歳になるから、安心して。

十六歳になったら、ちゃんとみんなと同じように大人の世界へ連れて行くから。


じゃあ、帰ろう一緒に。

帰り道、わからないんだろ?」


そう言って、おにいちゃんは私に手を差し出した。


「なんで、手?」